結論(要約)
Edition XS は、開放型・平面駆動らしい広大な音場と見通しのよい中高域、軽やかな分離感が魅力のヘッドホンです。低域は量より質、スピード感と輪郭重視。電源やアンプの取り回し次第で鳴り方が伸びるタイプで、据え置き寄りの運用だと真価を発揮します。長所と短所は以下の通りです。
- 良いところ
- 左右・前後に広がる音場とクリアな定位
- 中高域の抜けとディテール表現が秀逸
- 平面駆動らしい瞬発力と分離の良さ
- 装着感は側圧弱めで長時間リスニングに向く
- 惜しいところ
- 低域の量感は控えめで、ドンシャリ好みには物足りない
- 駆動力に余裕があるアンプを併用したい
- 開放型ゆえの音漏れ・外音取り込みは回避不可
開封とビルドクオリティ
箱を開けると大ぶりの楕円パッドとオープンバックグリルがまず目に入ります。フレームは軽量で、見た目のサイズ感に反して持ち上げると拍子抜けするほど。仕上げは実用品的で、装飾は最小限。ケーブルは片出しではなく左右独立の着脱式で、交換しやすいのは好印象。可動部のガタつきや異音はなく、日常使いの範囲では十分な剛性です。
装着感とフィット
側圧は弱~中の範囲で、頭頂部の荷重分散も良好。楕円の大きめイヤーパッドは耳をすっぽり覆うため、長時間でも耳介が当たりにくいです。メガネ使用でもツルと干渉しにくく、締め付けのストレスは少なめ。強いホールド感を期待する人にはゆるめに感じるかもしれませんが、リスニング中のズレは特にありませんでした。
音質レビュー
全体傾向
見晴らしのよいワイドレンジ。開放型らしいエア感に、平面駆動ならではの素早い立ち上がりが乗ります。音の置き方はフラット志向ですが、体感として中高域の透明感が一歩前に出るバランス。密度で押すのではなく、余裕のあるスケール感で聴かせます。
低域
量は控えめ、質は高いタイプ。タイトでブーミーさがなく、キックのエッジやベースラインのニュアンスをきっちり描きます。EDMや重低音を量で浴びたい場合はアンプでドライブしてやるか、軽くイコライジングすると満足度が上がります。スピードは速く、フレーズの輪郭がにじみにくいのが美点です。
中域
ボーカルは近づきすぎず遠すぎず、鼻にかからない自然なトーン。アコースティックの胴鳴りや弦の擦過音、ピアノの倍音が澄んでいて、混み合ったアレンジでもパートが埋もれません。録音の癖がそのまま出るので、良録音ほど気持ちよく、粗い音源は容赦なく粗さを見せます。
高域
伸びがよく、シンバルの減衰やリバーブの尾がきれいに抜けます。刺さりはコントロールされていて、過度にキンつかない印象。空間の空気感を描くのが上手く、音場の“天井が高い”感覚に直結しています。
音場・定位・分離
左右だけでなく前後や高さ方向にも広がるタイプで、ライブ盤やクラシックのステージングは生き生き。楽器同士の間合いが取りやすく、複雑な編成でも“どこで誰が鳴っているか”が掴みやすいです。ヘッドホン特有の頭内定位をうまく和らげ、スピーカー寄りの広がりを感じさせます。
ダイナミクスと解像感
微小信号の表出が巧みで、弱音のニュアンスや空間の残響がよく見えます。一方で、瞬間的なフォルテも破綻せず、音像が潰れにくい。解像感は高いのに、神経質に感じない“抜けの良さ”が特長です。
駆動力とアンプ相性
スマホ直挿しでも鳴らないことはありませんが、音量を上げても厚みが出切らず、低域の床が薄く感じます。USB-DAC内蔵のポータブルアンプでも改善しますが、据え置きクラスのヘッドホンアンプに繋ぐと、低域の沈み込みと音場の奥行きが一段伸び、Edition XS のポテンシャルを体感できます。音の傾向としては、ほんのりウォーム~ニュートラルなアンプと好相性。ドライすぎる駆動だと痩せやすいので、わずかに厚みを足せる機材がベターです。
音楽ジャンル別の印象
- ポップス/ロック:ボーカルの表情が豊かで、ギターの分離が気持ちいい。低域は足りないと感じたら少しだけブースト。
- ジャズ:ホーンの倍音が美しく、ライドの残響が滑らか。ベースは量は多くないが、ラインの追いやすさは抜群。
- クラシック:ホールトーンの再現が巧み。弦の群奏でもきつさが出にくく、ステージの立体感が映えます。
- EDM/ヒップホップ:スピード感は合うが、重低域の“圧”はアンプの駆動力やEQで補いたいところ。
ゲーミング/映画視聴
横と奥行きの見通しが良く、足音や環境音の方向が把握しやすいので、定位重視のゲームで優位に働きます。映画はセリフが埋もれにくく、環境音の空気感が豊か。低音の爆発力は密閉型ほどではないものの、サラウンドの広がりを気持ちよく楽しめます。
同価格帯・兄弟機との比較
- HIFIMAN Sundara:Sundara はもう少しタイトでスリムな鳴り。Edition XS は音場の広さと中高域の抜けで一段上。低域の量感はどちらも控えめだが、XS の方が空間的余裕を感じます。
- HIFIMAN Ananda 系:Ananda は情報量とレンジの広さで堂々。Edition XS は近いキャラクターながら価格とのバランスに優れ、日常リスニングに馴染みやすい。
- ダイナミック型の密閉機一般:密閉は低域の圧と遮音・音漏れ対策で有利。Edition XS はその逆で、解放感と見通しが強み。シーンで使い分けるとストレスが減ります。
不満点と対処
- 低域の量感:軽く EQ で 2~3dB 足す、もしくはウォーム寄りのアンプを選ぶと解決しやすいです。
- 音漏れ・外音:開放型の宿命。夜間や図書館では不向き。家庭内なら視聴環境を選ぶことで対処可能。
- 取り回し:サイズが大きめで携行性は低い。据え置き前提のヘッドホンと割り切るのが現実的です。
こんな人におすすめ
- スピーカー的な広がりと見通しの良さをヘッドホンで味わいたい
- ボーカルやアコースティック、クラシックの空気感を重視する
- 作業用 BGM でも音の分離がよく、疲れにくい音を求めている
- アンプを含めた据え置き構成でじっくりチューニングしたい
よくある質問(簡潔版)
Q. スマホ直挿しで十分?
最低限は鳴るものの、本領は発揮しにくいです。小型 DAC/AMP 以上を推奨します。
Q. 低音が物足りないと感じたら?
ソフト側で軽くブーストするか、ウォーム寄りのアンプを併用するとバランスが整います。
Q. 普段使いは快適?
側圧が穏やかで長時間でも疲れにくい一方、開放型なので音漏れ環境には注意が必要です。
総評
Edition XS は、平面駆動開放型の良さを“日常の長時間リスニング”に落とし込んだ良作です。広く澄んだ音場、きめ細かなディテール、肩の力が抜けたリスニングのしやすさ。重低音の押し出しや遮音性を最優先しないなら、価格と体験のバランスは非常に良好です。アンプを含めた環境づくりでさらに一段上のステージに到達できる“伸びしろ”も、オーディオ好きには嬉しいポイント。開放型で迷ったら、最初の一本として自信を持って勧められる選択肢です。
