退職代行サービスはここ数年で利用者が急増し、テレビやSNSでも話題になっています。その中で「弁護士が行う退職代行」は、法的な交渉が可能で安心感が高いといわれる一方、検索候補には「失敗」という不安なキーワードも出てきます。
「本当に退職できないケースがあるのか」「費用やスピード面で後悔するのではないか」といった疑問は、多くの人が気になる点でしょう。
ここでは、弁護士退職代行のメリット・デメリットを整理しつつ、「失敗」と感じやすいケースやその回避方法を解説していきます。
弁護士の退職代行は失敗する?
弁護士に頼んでも退職に失敗するの?
結論からいえば、弁護士に依頼して「退職できなかった」というケースは極めて稀です。法律上、労働者は退職の自由を保障されているため、弁護士が介入すれば退職手続き自体は必ず進みます。
ただし、「思ったより時間がかかった」「弁護士費用が想定より高かった」「会社との関係が悪化した」といった形で、本人が“失敗”と感じることはあり得ます。つまり「退職そのものの失敗」ではなく「期待とのズレ」が大半です。
民間退職代行と比べて本当に安全?
民間退職代行サービスは2~3万円程度と費用が安く、即日で会社に連絡してくれる手軽さが魅力です。ただし、会社と交渉する権限はなく、未払い残業代や損害賠償といった法的トラブルには対応できません。
一方、弁護士退職代行は費用が高い反面、法的な交渉が可能であり、違法性を問われる心配もありません。安全性や確実性を重視するなら、弁護士に依頼するメリットは大きいといえます。
どんなトラブルやデメリットがあるの?
弁護士退職代行で多い不満やトラブルは次の通りです。
費用が高額になる(5~10万円以上かかる場合もある)
スピード感に欠ける(即日退職したい人には不向き)
事務所によってサービスの質に差がある(経験の少ない弁護士だと連絡が遅いことも)
会社との関係がこじれるリスク(弁護士の介入に会社が強く反発するケース)
これらは退職そのものを妨げるものではありませんが、依頼者が「思っていたのと違う」と感じる原因になりやすい要素です。
弁護士が行う退職代行の特徴
退職代行には「民間業者」と「弁護士」が提供する2種類のサービスがあります。その中で、弁護士が行う退職代行には次のような大きな特徴があります。
法律に基づいて交渉ができる
弁護士退職代行の最大の強みは、会社との法的交渉が可能であることです。
民間退職代行は「退職の意思を伝えるだけ」にとどまるため、未払い残業代や退職金トラブルがあっても交渉できません。一方、弁護士なら労働基準法や民法に基づき、正式な交渉を通じて解決を図ることができます。
退職届の提出から未払い残業代請求まで対応可能
弁護士退職代行は、単なる「退職の伝達」にとどまらず、退職届の作成・提出、貸与物の返却手続き、未払い賃金や残業代の請求まで幅広くカバー可能です。
特に未払い賃金請求は法的な手続きが必要になるため、弁護士に依頼することが「安心かつ確実な回収」につながります。
弁護士だからこそ安心できるポイント
退職代行業界では「非弁行為(弁護士でない者が交渉すること)」が問題視されることがあります。民間業者に交渉を依頼すると違法行為にあたる可能性がありますが、弁護士ならその心配はありません。
さらに、弁護士は守秘義務を持ち、依頼内容が外部に漏れるリスクも少ないため、法的にも心理的にも安心して任せられるのが大きなメリットです。
弁護士退職代行でも「失敗」と感じるケース
「弁護士に依頼すれば安心」というイメージが強い一方で、実際には「失敗だった」と感じるケースも少なくありません。その多くは退職そのものが不成立になるのではなく、依頼者の期待と現実のギャップから生じています。
退職そのものは成功しても「思ったより時間がかかった」
民間退職代行のように即日で動くケースと比べると、弁護士事務所は手続きに確認作業を挟むことが多く、結果的に日数がかかる場合があります。特に「今日すぐに連絡してほしい」と考えている人には、スピード感のなさが不満となりやすいです。
事務所によって対応が遅い・連絡がつきにくい
弁護士事務所によっては、退職代行を専門にしていないところもあり、スムーズに進まないケースがあります。依頼してから数日経っても連絡が来なかったり、進捗がわからず不安になったりするのは、利用者が「失敗だった」と感じる代表的な要因です。
会社との関係が余計に悪化してしまった
弁護士が介入することで、会社側が強く反発し、感情的な対応をされる場合があります。特に中小企業や家族経営の会社では「弁護士を立てるなんて非常識だ」と受け取られることもあり、円満退職を望む人にとっては「逆効果だった」と感じることがあります。
想定外の追加業務(貸与物返却、清算対応など)に手間取った
弁護士に依頼しても、すべてを丸投げできるわけではありません。制服や社員証、パソコンなどの貸与物は自分で返却する必要があり、会社とのやり取りが完全にゼロになるわけではありません。そのため「全部代行してもらえると思ったのに…」と失望する人もいます。
弁護士退職代行で失敗を防ぐためのチェックリスト
弁護士退職代行は法的に安心できる一方で、「思ったのと違った」と後悔する人もいます。そうならないためには、事前に次のポイントを確認しておくことが大切です。
料金体系を必ず確認する(追加費用・成功報酬の有無)
弁護士退職代行の費用は、基本料金+オプション費用 という形になっている場合があります。未払い賃金請求や損害賠償請求を依頼すると追加費用がかかることも。契約前に「着手金」「成功報酬」「追加費用」の有無を確認し、総額がいくらになるのか把握しておきましょう。
実績や口コミ・評判を調べる
退職代行の経験が豊富な弁護士事務所もあれば、普段は別の業務が中心で退職代行に慣れていない事務所もあります。公式サイトの実績や利用者の口コミを参考に、「退職代行を専門的に扱っているかどうか」を確認することが失敗を防ぐ第一歩です。
「交渉が必要か」「伝達だけでよいか」を整理しておく
あなたのケースが法的交渉を伴うのか、それとも退職の意思伝達だけでよいのかを事前に整理しておきましょう。単なる退職の連絡であれば、費用の安い民間退職代行で十分な場合もあります。一方、未払い賃金やトラブルを抱えているなら、弁護士でなければ対応できません。
即日退職を希望するなら対応スピードを要確認
弁護士は法律的な確認や文書の準備に時間がかかるため、即日対応できないことがあります。「今日中に連絡してほしい」という人は、即日対応可能かどうかを必ず確認しましょう。スピード重視なら、民間退職代行の方が適している場合もあります。
弁護士退職代行を選ぶべき人
では、具体的にどんな人が弁護士退職代行を選ぶべきなのでしょうか。以下の条件に当てはまる場合は、弁護士への依頼を検討する価値があります。
未払い賃金・残業代を請求したい人
未払いの給与や残業代を会社に請求したい場合、民間業者では対応できません。弁護士なら労働基準法に基づいて交渉し、支払いを求めることができます。金銭トラブルを同時に解決したい人に最適です。
損害賠償請求・退職トラブルが発生している人
会社が「損害賠償を請求する」と主張したり、退職をめぐって強く揉めているケースでは、法律知識が必須です。弁護士なら相手の主張の正否を判断し、必要なら裁判手続きまで見据えて対応してくれます。
上司のパワハラや引き止めが強く、法的トラブル化している人
上司からのパワハラや不当な引き止めが激しい場合、民間退職代行では歯が立ちません。弁護士が介入することで会社側も無理な引き止めを続けにくくなり、早期解決につながります。安心して退職したい人には心強い選択肢です。
民間退職代行でも十分な人
弁護士退職代行は安心感がある一方で、費用やスピード面ではハードルが高いと感じる人もいます。状況によっては、民間退職代行でも十分対応可能です。
単純に「退職の意思を伝えるだけ」で良い人
会社に対して「退職したい」という意思を伝えるだけで足りる人は、民間退職代行で十分です。交渉が必要なトラブルがなければ、安価でスピーディに退職手続きが進みます。
即日で退職の連絡を済ませたい人
「今日中に会社へ連絡してほしい」「明日から出社したくない」といった緊急性の高い場合は、即日対応を得意とする民間退職代行が向いています。弁護士は確認や手続きに時間を要するため、スピード重視なら民間が現実的です。
コストを抑えたい人
弁護士退職代行の費用は5万円以上になることが多いのに対し、民間退職代行は2~3万円程度が一般的です。できるだけ費用を抑えて退職したい人は、民間業者を選ぶ方が負担が少なくなります。
弁護士退職代行に関するよくある質問(FAQ)
最後に、弁護士退職代行についてよくある質問をまとめました。不安や疑問を解消して、安心して判断できるようにしましょう。
弁護士に依頼しても会社が拒否したらどうなる?
法律上、労働者には退職の自由が保障されているため、会社が「退職を拒否」することはできません。弁護士を通じて退職届が提出されれば、会社が受け入れなくても法律上は退職が成立します。
弁護士費用はどのくらいかかる?
相場は5万~10万円前後です。未払い賃金請求や損害賠償対応を追加するとさらに費用がかかる場合があります。契約前に「基本料金」「追加費用」「成功報酬」の有無を確認しておくことが重要です。
弁護士が交渉してくれる範囲は?
弁護士は法律に基づき、未払い賃金や残業代の請求、退職金の清算、損害賠償への対応など幅広い交渉が可能です。民間退職代行が「伝えるだけ」にとどまるのに対し、弁護士は実際の交渉や法的手続きまで担える点が大きな違いです。
即日退職できるの?
弁護士でも「退職の意思」を即日会社に伝えることは可能ですが、事務所によっては対応に数日かかる場合があります。即日対応を重視するなら「即日連絡可能」と明記している弁護士事務所を選ぶか、民間退職代行を検討しましょう。
まとめ ― 弁護士退職代行の「失敗」を避けるポイント
弁護士退職代行における「失敗」とは、退職自体ができないことではありません。実際にはほぼ確実に退職は成立します。
しかし、利用者が「思ったより時間がかかった」「費用が高かった」「サービスに不満があった」と感じることで、“失敗”と受け止められるケースがあるのです。
大切なのは、自分の状況を冷静に見極めることです。
- 未払い賃金や損害賠償といった交渉が必要か
- 単に退職の意思を伝えたいだけか
この点を整理すれば、弁護士に依頼すべきか民間で十分かが明確になります。
さらに、事前に 費用・スピード・交渉範囲 を確認しておけば、期待とのズレを防ぐことができます。
つまり「退職代行 弁護士 失敗」を避ける最大のポイントは、依頼前に情報をきちんと比較・確認することに尽きるのです。
